※新組織改編前に作成した記事です
社会調査法という無限の科学的チャレンジ
Takeshi Kato
加藤 毅 准教授
パラダイムシフトを伴う大変革(革命的転回)はあるにせよ、自然科学分野における法則は一般に、安定的でかつ高い汎用性を有していると理解されています。これと対照をなすのが、社会科学分野の法則です。社会の変化が加速し、変化の幅も飛躍的に拡張しているので、将来を予見することが難しくなっています。多くのビジネスに大きな困難をもたらしているこの変化は、当然、社会科学分野の研究にも少なからぬインパクトを及ぼすことになります。
いま社会で何が起きているのか。先が見えなくなってきているからこそ、少しでも先行事例からヒントを得ることができないかと考える人が増えています。信頼できる知識に対するニーズは高まる一方です。
安定性の高い社会であれば、開かれた議論を通じて、科学的な理解が形成されていきます。ところが現実の社会といえば「成功経験を捨て去れ」という言葉に象徴される通り、急速に変化しています。
社会経済情勢などの前提としてきた条件が急速にそして大幅に変化する。このような時代にあって、研究対象とする社会現象について、既存の科学的理解の延長線上で対応することが困難という状況も少なくありません。ビジネスと同様、社会科学分野の研究に対してもイノベーションが期待されることになります。
もちろん、ゼロから新たに知識構築をはじめるわけではありません。科学研究は、対象領域に関する理解と並行して、探求のための方法を研ぎ澄ますことにより高いプライオリティが付与され進められてきました。対象領域に劇的な変化が起きたとしても、方法の有効性が薄らぐことはありません。そのためにこそ、不断の探求が続けられているのです。その代表的な方法の一つが、私が大学院で講義を担当している社会調査法です。
社会調査は、思いつくままに質問を羅列するやっつけ仕事などではありません。方法論に裏づけられたメタスキルを十全に活用することで周到にデザインされた、高度の知的活動に他なりません。
激変が続きさらに混沌とする社会に対して一定の理解を打ち立て、そこから有効なインプリケーションをひきだす。社会調査法という無限の科学的チャレンジを、皆さんも楽しんでみませんか。