学位プログラムリーダーメッセージ

AI技術の急速な進展により、企業経営を取り巻く環境は大きく変化しています。情報収集や分析、定型的な意思決定の多くは、AIによって効率化されつつあります。しかしその一方で、どのような問題を課題として捉えるのか、AIの出力をどのように解釈し、最終的にどのような判断を下すのかといった根本的な意思決定は、依然として人に委ねられています。AIが全盛となる時代だからこそ、経営に携わる人材には、より高度な思考力と判断力が求められています。

経営学学位プログラムが学生の皆さんに提供したいのは、単なる知識や技術の習得ではありません。本プログラムが育成を目指すのは、複雑で正解のない課題に対して、自ら問題を発見し、科学的思考に基づいて解決へと導く力です。その中核に位置づけているのが、修士論文・博士論文研究です。研究を通じて、問いを立て、仮説を構築し、データや理論を用いて検証するという一連の思考プロセスを身につけます。この過程で、統計分析に限らない、広い意味でのアナリティクス能力を養います。重要なのは、分析手法そのものに加えて、分析を通じて現象を理解し、意思決定につなげる力を身につけることです。

また、本プログラムでは、研究発表や議論の機会を重視しています。複数回にわたる研究発表を通じて、自らの考えを論理的に整理し、他者に分かりやすく伝える発表スキルやコミュニケーション能力を育成します。さらに、修士・博士論文やレポートの執筆を通じて、思考を文章として構造化する力を磨きます。こうした表現力や文章作成能力は、研究の場にとどまらず、実務においても不可欠な基礎能力となります。

加えて、経営学学位プログラムは、多様なバックグラウンドを持つ社会人学生が集い、互いに学び合う場でもあります。在学中に築かれる学生同士のネットワークに加え、修了生や教員とのつながりを含めた人的ネットワークは、本プログラムの大きな特徴の一つです。異なる業界や職種、経験を持つ仲間との対話は、視野を広げ、新たな発想を生み出す貴重な機会となり、修了後も続く学びとキャリア形成の重要な基盤となります。

経営学学位プログラムは、社会人のリカレント教育を主眼として、経営システム科学専攻(修士)および企業科学専攻システムズ・マネジメントコース(博士)を再編し、2020年4月に発足しました。その基盤には、40年近くにわたる社会人教育の実績があります。前身である経営システム科学専攻は、1989年に国立大学として初めて社会人向け夜間大学院として創設され、経営学学位プログラム博士前期課程とあわせると1000名を超える修了生を送り出してきました。また、1996年に設置されたシステムズ・マネジメントコース及び経営学学位プログラム博士後期課程からは、150名を超える博士人材が輩出されています。長年にわたり培われてきた、社会人が仕事と学業を両立しながら学べる教育環境と、実務と学術を架橋する教育・研究体制は、現在の経営学学位プログラムにも確実に引き継がれています。

本プログラムは、これまでに蓄積してきた教育・研究の経験を基盤に、AI時代においても変わらず価値を持つ「問題を見出す力」「科学的に考える力」「他者と対話し、社会に発信する力」を育成する場であり続けたいと考えています。本プログラムでの学びが、長期にわたりビジネスの現場や社会で活躍するための確かな土台となることを願っています。

経営学学位プログラムリーダー
尾崎 幸謙

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