※新組織改編前に作成した記事です
企業活動によるお金の流れを
“内と外”から分析する学問分野「ファイナンス」
ビジネス上の課題解決にも直結
Yuji Yamada
山田 雄二 教授
ファイナンスは、企業の財務担当者の意思決定に関わる内側からのファイナンスと、金融市場を分析する外側からのファイナンスに分けることができます。このようなファイナンスの問題を数理モデルやシミュレーション手法を駆使して工学的に解く、金融工学分野を専門としているのが山田雄二教授です。山田教授は、修士課程ではコーポレートファイナンスの基礎や、インベストメント理論に関する講義を担当し、日頃のビジネスにおけるファイナンス上の課題解決に役立つ考え方やツールについて教えております。
ファイナンスは、大きく分けて、企業の財務担当者の意思決定に関わる内側からのファイナンスと、企業活動の結果投資家に還元されるべき利益に関わる金融市場を分析する外側からのファイナンスに分かれます。前者が「コーポレートファイナンス」、後者が「インベストメント理論」と呼ばれ、私が修士課程で担当するのは、前者の導入部分を取り扱う「ファイナンス基礎」と、後者について取り扱う「インベストメントサイエンス」です。ファイナンスはお金の流れに関する学問ですが、企業活動のお金の流れは、「資金調達」→「事業投資」→「利益還元」です。これを内側から見るか、あるいは金融市場を通して外側から評価するかというように考えると分かりやすいかもしれません。
私の研究分野は、担当科目と大きく関連しており、一言でいうと、「企業の意思決定」あるいは「コーポレートファイナンス」に関わる問題を「金融工学」的に解くことがアプローチとなります。ここで、金融工学という新しいキーワードが出てきましたが、金融工学とはファイナンスの問題を数理モデルやシミュレーションを利用して工学的に解く分野の総称で、主に新たな金融資産の理論価格を計算したり、投資をする際のリスク推定や個別資産に対する投資比率を計算したりするのに用いられます。例えば、最近の研究では、電力会社が分社化する際にどのように自己資本を割り当てたらよいかとの問いに対して、金融工学的にはオプション理論の応用として解が求められるのではないかと考え、研究を進めております。ちなみに、オプションとは株式などの金融資産を将来時点に固定価格で売買することができる権利(オプション)で、先渡との違いは権利なので将来、契約を破棄する権利を有することです。このようなオプション価格に対して理論価格を導いた方たちが1997年のノーベル経済学賞を受賞し、今でも金融工学分野の先駆け的研究と位置付けることができます。
もう一つ、電力市場のリスク管理、特に4月以降の電力自由化と大きな関連があるものと考えられる卸電力市場の価格予測を研究テーマにしているのですが、この研究は、小売りや発電ビジネスと深い関係があると考えられます。卸電力市場とは、国内ではJEPXと呼ばれる市場で翌日受渡しの電力を金融資産と同じように市場取引するものですが、実際に取引が成立するまで取引価格が不確定であるという取引リスクが存在します。私が現在、 手がけている研究は、そのようなJEPXの翌日受渡し価格を予測するといったものです。
上記2つの研究は、ビジネスに直結するものと思います。なぜなら、元々、企業の方やGSSMの修了生から研究のヒントをもらっているからです。私たちの大学院は、このように、実務から研究テーマを持ってくる学生が多い一方、教員は実務に詳しくはないがツールは持っている、そんな環境かと思います。ニーズとシーズをすり合わせることで、ビジネスに役立つ研究が生まれるところ、そんなイメージでGSSMを考えていただければと思 います。
<構成・舘谷 徹>