※新組織改編前に作成した記事です
三谷慶一郎さん
- 平成15年度修了(修士課程)
- 平成21年度修了(博士課程)
- 株式会社NTTデータ経営研究所
受験動機を教えてください。
もともと私はシステムエンジニアとしてシステムづくりをやっていました。システムづくりは、それ自体がとても面白かったのですが、最終的に企業にとって役に立ち、効果をあげていくことを目的としたとき、経営について理解していないと、システムをいくら作りこんでも限界があるのではないかと感じていました。その後、コンサルタントになってからもその気持ちが強くなり、もっと体系的に経営を学びたいと考えるようになりました。
GSSMを選んだのはどうしてですか。
受験先を決めるために、複数のビジネススクールを検討しました。当時、GSSMは『文理融合』を謳っていて、私の望みもITと経営という文理融合でしたので、直感的にここだと思いました。夜間主体であり、仕事と両立できるというのも決め手になりました。ちなみに私が今、取り組んでいるテーマに「IT経営」があります。これは、ITを活用して経営を実現することを意味します。ITの力をいかに経営に活かしていくか、CIOと言われているITも経営もわかるイノベーションリーダーには、どのようなケイパビリティが必要か、どのようにしてIT人材を育成していくべきかなど、様々な論点に関して検討を進めています。いま振り返ってみれば、GSSMは、このような重要なテーマを議論するうえでの基礎を提供してくれる貴重な場になっていたと思います。
受験勉強はどうでしたか。
修士の受験科目は、小論文と研究計画書、口述試験でした。研究計画書は、業務として取り組んでいた電子政府をテーマに書きましたし、小論文のテーマも、コンサルタントとしてふだん用いている知識でクリアできました。日々のコンサルティング活動を通じて研究計画書のような書類作成には慣れていたこともあって、特別な受験対策は行いませんでした。ただし、研究内容や研究アプローチなどは、入学後に指導教員である津田和彦先生とのディスカッションを通じて再検討することになり、結果的に大きく変わりました。
入学して印象に残ったことはありますか。
コンサルタント業務と大学院の研究は、大きく異なることを知りました。コンサルタントに求められるのはクライアントから示される問題解決です。極端な言い方ですが、提示した結論について、他の多くの人々が賛成したとしても、クライアントが納得しなければ全く意味をなしません。一方、大学院での研究では、まず問題は自分自身で設定しなければいけません。これがコンサルタントと大きく異なる部分です。さらに設定した問題を研究し、万人を納得させる結論を求められます。コンサルタントとは、異なる物の見方を知り、またそれを身につけることができたのは、とても有意義でした。
印象に残った授業を教えてください。
経営戦略や組織論など、多くの授業がとても参考になりました。一番印象に残っているのは、ビジネスゲームです。社会事象をモデルとして捉えるというアプローチは、とても新鮮でしたし、GSSMらしいと感じました。ビジネスゲームではチーム対抗でゲームの順位を競うのですが、私たちのチームはゲームのロジックをすぐに理解し、最初のゲームでトップになることができました。しかし二回目はモデル内のパラメーター変更を見破れず、悔しい思いもしました。ビジネスゲームは、ある種の社会モデリングのコンパクト版だと思いますが、科学的な目線で経営を見るときにとても良いアプローチだと思いました。
同級生はどんな方々でしたか。
修士課程の同級生は、20代から50代までと年齢層も幅広く、業界もさまざまでした。専門的な仕事に就かれている方のなかには、特定分野においては教員よりも詳しいのではないかと思う方もいらっしゃり、大変刺激を受けました。またGSSMでは、教員と学生が互いの立場を越えて知見や情報を共有しあう機会が多くあります。ビジネスの現場では、特定の専門領域の方々が集まることが多くあるため、全く異なる視点を得ることがなかなかできません。そういう意味で、GSSMで出会った優秀な方々との交流やネットワークは、とても貴重だと思っています。また、経営やIT分野の研究者である教員側から見ても、GSSMにおいて学生が持ち込む、リアルな企業等の課題について研究指導することはとても有意義だと思います。
早期修了制度を利用して博士号を取得されていますね。
早期修了制度は、一定の要件を満たしていれば、1年で博士号を取得できるプログラムです。私は、修士課程を修了後も定期的にゼミに参加し、現役生と交流したり、飲みにいったりしていましたし、OBが博士課程に進学するのも見ていました。そんなこともあって博士課程入学前から準備を進め、早期修了制度に挑戦することにしました。1年での博士号取得は正直とても大変でした。指導教員である津田和彦先生が1年間のロードマップを作成してくださり、それに遅れないように夢中で取り組みました。先生も親身になってしてくださり、週に1~2回は研究についてのディスカッション。メールは毎日のように飛び交っていました。研究生活では、立ち止まったり、振り返ったりする余裕はまったくありませんでしたので、家族にも迷惑をかけたと思いますが何とか修了できて良かったです。ちなみ、津田ゼミの同期生は私を含めて4名なのですが、うち3名が現時点(2012年2月)で既に博士号を取得しています。
仕事や家庭との両立の工夫を教えてください。
仕事と研究を両立させていくうちに、自然に時間の使い方が合理的になり、密度が濃くなっていきました。もちろん楽ではありませんでした。仕事を残して授業に参加して、深夜に会社に戻ったことも何度もありました。仕事の足を引っ張らないようにすることはいつも意識していましたが、結果から見ると研究生活を送っているときの仕事のパフォーマンスは通常以上によかったです。時間を有効に活用する術が、身についた結果かもしれません。その一方で、家族との時間を作るのには苦労しました。子供が小さかったので、妻と子供をアミューズメントパークに連れて行った後、自分だけ授業を受講するために茗荷谷まで往復したこともあります。
修了して身についたことはありますか。
専門分野の異なるGSSMの先生方からのサジェスチョンはとても役に立っています。また、仕事で接することのない方々と立場や役割を超えて真剣に議論ができたことも良かったです。日々の交流や議論を通じて、自分自身の棚卸ができましたし、小手先のテクニックではなく、中長期的に役立つスキルが身についたと思っています。また、私は元々、研究者と仕事をする機会が多いのですが、研究者の方々が私を同じ博士号を持つ仲間として見てくれるようになったことはとても嬉しく思っています。今後も、様々な価値観を持つ人々との積極的な議論を通じ、ITと経営に関わるテーマを追いかけていきたいと思っています。