※新組織改編前に作成した記事です
田中 淳さん
- 株式会社LIXIL
- 経営システム科学専攻
- Q.ふだん、どんなお仕事をされていますか?
- A. キッチン・浴室・トイレ・窓といった住宅用の建築材料を製造販売する会社の研究所に勤めていて、主に住宅建材向けの新素材開発に携わっています。
- Q.いつから、どんな理由で社会人大学院に進もうと思ったのですか?
- A. 入学する1年ほど前から考え始めました。
長年研究部門で仕事をしてきましたが、新しいものを世の中に出していくことの難しさを感じ続けています。技術的にある程度確立出来てきても、市場を見つけられないために、社内で受け入れてもらえず研究が中止になったり、環境配慮技術の場合は特に、社会に浸透していくのが難しかったりという問題があります。それでマーケティングの勉強をしたい、と思うようになりました。マーケティングリサーチのスキルを身につけて、自分で市場を発見出来れば、もっと研究成果を世の中に出していくことができるのではないか、と考えたからです。 - Q.社内で、社会人大学院で学ぶという事例はあったのですか?
- A. ありました。会社の制度として、毎年数人をMBAコースへ派遣してスキルを身につけさせる、というシステムがあります。最近は海外の大学院へ派遣しています。
- Q.社内での制度を利用して入学されたのですか?
- A. いいえ。私は会社の制度を利用せずに個人的にGSSMで学びました。社内の制度を使うと、修了するまでの2年間、仕事から離れることになります。丸々2年間は学生として勉強だけに集中するのです。私は研究も続けながら学びたかったので、仕事と両立できる夜間の大学院へ個人的に通学する道を選びました。
- Q.通学する上で就業時間は問題なかったのですか?
- A. 受験を決めたタイミングで上司に相談し、入学した場合のカリキュラムや授業時間を伝え、定時で仕事を終えて学校に向かわないと間に合わない旨を理解してもらいました。他にも転勤・出張・勤怠等へも配慮してもらうことができました。
- Q.GSSMを選んだ経緯を教えてください。
- A. 私の場合は環境配慮技術の研究をしていますので、通常のマーケティングスキルに加えて環境に特化したマーケティングについても学びたいと考えました。そこで色々と調べたところ、こちらの西尾チヅル先生が環境マーケティングの世界で非常に高名だと分かりましたので、先生の過去の論文も読ませて頂き、オープンキャンパスに参加した上で受験を決めました。
- Q.GSSMでは、どんな研究をしていましたか?
- A. 西尾チヅル先生ご指導の下、清掃性等の機能性に加えて、節水性、省エネルギー性、環境配慮素材といった環境配慮技術を搭載した住宅建材製品を消費者がどのように評価するか、環境配慮素材を用いた住宅建材製品を高く評価する消費者にはどのような特徴があるか、について研究しました。
- Q.仕事でもGSSMでの学びは活きていますか?
- A. すごく活きています。研究を進めるうえでマーケティングの視点やデータに基づく意思決定は重要ですし、統計が苦手でしたが、ここで学んだことを活かして日常業務で研究データの扱い方や見方もだいぶ変わりました。会社からも、研究部門の若手に学んだことを伝えていって欲しいと言われています。
- Q.研究をどう実際のビジネスに役立てたいとお考えですか?
- A. 地球温暖化問題が年々深刻化する中で、環境配慮技術を住宅建材に用いていく必要性は高まっています。しかし、それによって消費者が製品をどのように評価するのか、高く評価してくれる消費者は存在するのか、それはどのような消費者なのか、といったことは全く分かっておらず、技術導入の障壁になっています。修論研究を通じてこれらの一端を垣間見ることができました。今後は本業の開発に結果をフィードバックし、社会実装に繋げていきたいです。
- Q.働きながら研究する上で、困難はありましたか?
- A. 研究を進める上で苦労したのは、時間のねん出と統計ソフトを使いこなすことでした。GSSMの特色だと思うのですが、実証研究に重きを置いているということもあって、統計学や機械学習などの理数系の科目が多いです。私は統計があまり得意ではないので苦労しました。でも、同級生の中に得意な人がいて、すごく助けてもらえました。
- Q.この二年間で何を一番得られたと思われますか?
- A. 一番大きいものは、環境技術のマーケティングを学べたということです。元々その目的で入学しましたので、当初の目的は達成できたかな、と思っています。
学問以外の部分では、多様な仲間に出会えたことです。同級生は年齢も20代から50代まで幅広くいましたし、職種も様々でした。二年間、仲間とは本当に濃度濃く接し、サークルのようで楽しい時間を過ごせました。 - Q.個人的には今後どういった研究をしたいですか?
- A. ここでマーケティングの勉強をさせてもらいましたが、本当に入り口に立っただけだという感覚があります。基礎を学んだだけなので、これからは個人的にでも、業務を通じてでも、マーケティングリサーチのスキルを向上させたいと思っています。
- Q.どういう方にここで学ぶことを勧めたいですか?
- A. 私みたいに、業務上の課題を、専門外のスキルを新たに身につけることで解決できるかもしれない、というはっきりした目的がある方にはすごく向いているのでお勧めしたいです。
あとは、バラエティに飛んだ仲間が出来ますので、新しい切り口の仲間が欲しいと言う人にもお勧めできると思います。
本日は、長時間ありがとうございました。
(2019年3月取材)