※新組織改編前に作成した記事です

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宮井 弘之さん

  • 株式会社SEEDATA(博報堂DYグループ)
  • 企業科学専攻 システム・マネジメントコース

Q.入学の動機を教えてください。
A.私はGSSMの修士課程入学時から将来の博士号取得を視野に入れていました。修士課程進学時の入学動機についてお話ししますと、当時の私は博報堂のストラテジックプランナーとして消費財を中心にキャンペーン戦略や商品開発などマーケティング全般を担当していました。なかでも消費者調査が好きでしたので関連知識を体系的に学びたかったこと。そして、いつかは研究者になりたいという夢もあり、入学しました。
Q.研究テーマを教えてください。
A.修士課程から一貫して「おもてなし消費」をテーマに研究しました。問題意識としては、消費体験(エクスペリエンス)をどうやって高めていくのかといった点です。先行研究がありましたし、仕事でブランディングに関わる機会もありましたので、それをテーマに選びました。仕事ではプロダクトマーケティングが中心なのですが、研究はサービスマーケティングに焦点を当て、それを消費者行動の観点から整理するという立ち位置です。修士課程で研究をしている間に東京オリンピック招致活動において「おもてなし」という言葉が使われ、大きな話題となりました。国際学会で発表したときには外国の研究者から「おもてなし」と「ホスピタリティ」はどう違うのかと質問されるなど、「おもてなし」への関心の高さをうかがい知ることができました。
Q.研究で大変だったことはありますか。
A.修士論文と博士論文では、その難易度が格段に違います。博士論文の最初の難関はジャーナルに査読論文を通すこと。さらに、学術論文3本相当の論文を一つの博士論文にまとめることも大変でした。ジャーナルや学会よりも、学内の予備審査の方が厳しかったですね。複数の教員に論文指導をしていただいたのですが、主指導教員である西尾チヅル先生のクオリティチェックとディレクションは的確でその時々の状況を踏まえたアドバイスをいただきました。また、実務家出身の佐藤忠彦先生には社会人学生である私の立場も理解した上で、マーケティング・サイエンスの観点から丁寧かつハイレベルな指導していただきました。山田秀先生には、マーケティングとは異なる視点から論理的な矛盾点などを鋭く指摘してくださり、論文の精緻化に役立ちました。

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Q.仕事や家庭との両立はできましたか。
A.平日はほぼ仕事、研究は土日に集中してやっていました。また、論文の執筆はお盆休みや正月休みを活用しました。家族が旅行に出かけたときにも私だけ残って研究していましたので、そういう点では家族には申し訳なかったです。指導教員との面談やゼミの前日は、睡眠時間を削って準備していました。仕事柄、プレゼンテーション準備などで夜遅くまで作業することもあり、深夜作業に慣れてはいたのですが、それでも大変でした。
Q.研究を進める上でゼミが助けになったことはありますか。
A.西尾ゼミはOB・OGとのネットワークが強いのが特徴です。西尾チヅル先生がマーケティング・サイエンス学会の部会をもたれていて、多くの先輩方が参加しています。部会では現役生にも発表の機会が与えられますので先輩からさまざまな意見やアドバイスをいただくことができます。私も分析手法の相談に乗っていただきました。
Q.研究は実務でも役立っていますか。
A.研究は仕事にも活きています。業務の一環として先進的な消費者研究をもとに未来洞察のレポートを作成しているのですが、その部分ではGSSMで研究してきたサービス・デザインの考え方が活きています。対象プロダクトは、ビール、タバコ、クルマなど嗜好品が多いのですが、現在ではモノとサービスを二分して考えるというよりも、サービス・ドミナントロジックの考え方がメインになっているので、その考え方を自然と入れて提案できるのは強みですね。実際に提案した多くのクライアントで販売実績が上回るなどの成果も出ています。

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Q.博士号を取得して良かったことはありますか。
A.はい。私の会社はメーカーの研究開発部門に対して消費者分析の方法論を導入して支援する、いわゆるシンクタンク的な業務を一部行っているのですが、取引先である大手メーカーには工学やバイオなどの博士号取得者が多くいらっしゃいます。博士号を取得したことで仕事がしやすいということはあります。また、GSSMではモデルで考える思考スタイルが中心です。文系出身者はモデルで考える機会が少ないと思うのですが、GSSMで学んだことで自然とそのような思考が身につきました。また、当社には大学生・大学院生のインターンも出入りしているのですが、彼らの研究についてアカデミックな視点でのアドバイスもできるようになりました。
Q.今後のキャリアについて教えてください。
A.当社はラボ型の組織を目指しているのですが、その動きをさらに加速させていきたいですね。現在、大手メーカーの研究機関と共同で消費者研究に取り組んでいますし、さらにベンチャー支援にも着手しています。一方、アカデミックの部分では西尾チヅル先生と共同で論文を執筆して投稿しています。さらに、新しい研究テーマに着手していて、いずれその成果を学会発表したいとも思っています。
ありがとうございました。

 

(2017年2月取材)
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