※新組織改編前に作成した記事です

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大橋 竜馬さん

  • 富士通株式会社
    現在はFujitsu Laboratories of America. Inc. 出向中
  • 経営システム科学専攻

Q ふだんのお仕事内容について教えてください。
A  富士通でグローバルマーケティング部門に所属しています。在学中はコーポレートブランド戦略を担当していました。グローバルに一貫性ある企業ブランドの構築を目指し、社内の意識変革や社外プロモーションを推進する役割です。グループ統一のブランドプロミスの策定、社内ワークショップ、ビジュアルアイデンティティの刷新、Webやイベント・施設への適用など広く活動を展開していきました。
 現在は北米シリコンバレーにある研究所で、企業、大学・研究機関、スタートアップ等との共創を通じてイノベーションの加速を図るOpen Innovation Gatewayというプロジェクトのマネージャーをしています。ブランディングとオープンイノベーションは一見関係ないように聞こえるかもしれませんが、自社のブランドプロミスとして「コラボレーションを通じたイノベーション創出」を掲げており、オープンイノベーション活動はその実践と捉えています。
Q GSSMでどんな研究をしていましたか?
A  西尾チヅル先生の下でマーケティングを専攻しました。広範なマーケティング知識を身に着けたいとも考えていましたし、実務課題がアカデミックの分野ではどのように扱われているのか、研究を通じてその解決の糸口が見つかればと考えていたんです。
 研究テーマとしては、「企業の社会貢献活動の構成要素が消費者の選好に与える影響」を取り上げました。持続可能な社会が重要性を増す中で、社会貢献活動は企業のブランド構成要素の中でも無視できないものとなっています。各企業によって社会貢献活動の方針や実際に進めている活動に特色があり非常に興味深いのですが、消費者はそれを一体どのように捉え、評価しているかという部分に興味がありました。
 西尾先生はブランディングに加え、環境マーケティングを長年専門とされているため、多角的な視点から研究の方向性をご指導いただきました。副指導の先生方にも研究内容を丁寧にレビューいただき実証を進めていったのですが、定量調査をコンジョイント分析した結果、自分で立てた仮説とは異なる結果が出てしまいました。それをどう受け止め、解釈するかという点が非常に大変でもあり、今思うと面白い部分でもありましたね。
 研究室の雰囲気はとてもフレンドリーで、OB・OGの方々とのつながりが強いことも研究の支えでした。分析手法の研究テーマへの応用や結果の解釈に関して、年末年始の忙しい時期に博士課程の方やOBの大学教授の方など研究室の多くの方々にお世話になったことを覚えています。

 

Q 研究をどう実際のビジネスに
役立てたいとお考えですか?
A  私の場合、現在業務の軸足をブランディングからオープンイノベーションに移しており、修士の頃の研究分野と現業が変化しているケースなのですが、研究内容は自社の社会貢献活動を検討する材料の一つとして所属していたブランド部門やCSR部門に共有しました。
 大学院で分析手法を学び、自身の研究テーマを実証していくことは非常に貴重な経験でしたし、何より筑波は教授陣と学生の距離がとても近いため、幅広い分野の先生方から専攻分野を超えた知識習得ができたことも現在のビジネスに役立っています。修了した今でもオープンイノベーションを専門にされている経営戦略系の先生にアドバイスをいただくなど、引き続き大学院との関係は継続しています。
 実は入学にあたっては、ケーススタディを中心に進めていく所謂「ビジネススクール」と悩んでいました。他大学院で単科コースを受講した経験からその面白さに魅かれていたためです。ただ、最終的には研究を重視する筑波を選択したことは正解だったと思っています。シリコンバレーは大学・研究機関と企業の連携が非常に盛んですし、上司も企業とアカデミアを常に行き来している人なので、大学院で学んだ知識や研究手法が下地となって周囲の会話が理解できることが数多くあります。

 

Q 社会人学生として、研究する上での困難は
どんなことですか?
また、仕事・家庭・研究のバランスを
どうとっていますか?
A  修士課程に進むことについて、定時後自費での進学でしたので職場は理解してくれましたが、家庭の方が問題でした。フルタイムで仕事をしつつ二人の子供の面倒を見る妻に、平日に加え土曜日も負担を掛けることについて説得を繰り返しました。最終的には仕事と学業を必死で頑張る父親の背中を見てもらうことで、子供たちが何かを感じてくれればということで納得してもらいましたが、果たして良い影響を与えられたかどうかはわかりません(笑)。
 社会人と学生の両立にあたっては一定期間は覚悟が必要だと思います。初年度は研究に関する広い知識習得をし、同時にある程度の単位取得も必要となります。定時に会社を退社し、大学院に通い、そしてまた会社に戻り、家では深夜まで課題をこなす日々が続きました。大学院に通うことで業務の質を落とすわけにはいかないため、自分としても必死でしたね。
 二年目に入り、ようやく自分の研究に充てる時間が出来ましたが、今度は研究の方向性について先生方から厳しい指摘をいただき、なかなか研究が前に進まずに初年度とは別のプレッシャーがありました。本当に研究がまとまるのかと途方にくれたこともありますし、修了の直前まで論文を修正したり、ある意味二年目のほうが大変だったかもしれません。
 ただお話ししたようなことは、社会人学生であれば皆さん経験されることだと思いますし、周囲も同じ状況ですので、修了するという強い意志があれば同期の仲間たちとモチベーションを維持できると思います。

 

 

(2016年3月取材)

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