※新組織改編前に作成した記事です

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高山美和さん

  • 平成11年度修了(修士課程)
  • パナソニック株式会社

受験動機を教えてください。

私は社会人になってから“企業と消費者のパイプ役”をテーマに掲げ、仕事に取り組んできました。入社以来、マーケティングの一環として生活研究を手掛けてきた私は、お客様のリアルな声を聞く必要性を感じ、93年からお客様センターに異動し、ご相談対応やお客様の声を反映するシステム構築プロジェクトなどに取り組んでいました。95年、お客様相談センターにフリーダイヤルが導入されたことにより、お問い合わせが37万件から65万件へと大幅に増加しました。現場で働く社員として、お客様の声をどうしたらもっと有効活用できるか。1回1回の相談対応でのお客様満足を高めるにはどうしたらよいか、その解決のためにGSSMへの入学を決意しました。

GSSMを選んだのはどうしてですか。

育児書を借りに行った図書館で、社会人大学院関連の書籍を偶然見つけ、そのなかにGSSMが紹介されていました。仕事をしながらMBAが取得てできること。さらに数理や統計分析、計算機科学など多様な科目を網羅している点に興味を持ちました。もちろん経済的な負担が少ない国立大学であることや会社から通いやすい茗荷谷という立地も決め手でした。受験を決意したのが夏で、入試まで時間がなかったのですが、入社10年目に取得できるチャレンジ休暇(1ヶ月)という制度を利用して集中的に準備をしました。

印象に残った授業を教えてください。

入学してからは多様な分野への興味が広がって、いろんな科目を欲張って受講しました。なかでもオペレーション・リサーチ演習は印象に残っています。これは学生がチームを組んで、課題に取り組む実習要素の強い授業ですが、こんなことがありました。私が持参した、“お客様相談センターの電話の着呼データ”を担当教員である牧本直樹先生に指導いただいたモデルに当てはめたところ、理論通りの結果が導かれたのです。研究者が構築した理論モデルと、私が実務経験として知っていることが一致したことは、大きな驚きでした。その他に印象に残っている授業としては、ビジネスゲームがあります。大きな会社に勤務していましたので、会社の一部分しか見ていませんでした。それがゲームを通じて、ビジネスの流れを俯瞰的に理解することができました。

同級生との関係はどうですか。

在学中は意欲的な同級生たちから刺激を受けることが多かったですね。1年の夏には、同級生有志で共分散構造解析ソフトウェアAMOSの自主勉強会を行いました。GSSMの先輩である竹内淑恵先生も勉強会に参加し、丁寧に指導してくださいました。当時、AMOSのマニュアルは日本語化されておらず、英文マニュアルを頼りに使用方法などを学びました。私は修士論文作成においてAMOSを利用したので、この勉強会は研究を進める上で欠かせないものになりました。また、苦手科目のときには、同期で助け合ったりして、私は計算機科学の時にはSEの同級生に随分助けてもらいました。私たちの学年は女性が8人と多く、また男性・女性を問わずたいへん仲の良い学年だったと思います。いまでもメーリングリストを通じて交流が続いているほか、定期的に会って情報交換もしています。

研究について教えてください。

私の研究テーマは、お客様相談センターにご連絡いただいたお客様の顧客満足度向上についてです。お客様相談センターには、2つの役割があります。一つは、お電話いただいたお客様の満足度を高めること。もう一つは、お客様の声を社内にフィードバックし、商品企画などに活かすことでした。私は指導教員である西尾チズル先生のアドバイスもあって、お客様満足度の向上にフォーカスし、研究に取り組みました。会社の上司が私の研究テーマを理解してくれ、アンケート費用なども会社が支援してくれました。私の研究は、モデルを構築して各因子間の適合度が最も優れたモデルを探索するタイプの研究でしたので、構造を仮定し、納得できる解釈ができるまでAMOSでの分析を繰り返しました。統計がご専門の椿広計先生にも、何度もアドバイスいただきました。GSSMは先生と学生の距離がとても近く、密なコミュニケーションができるので、研究を進める上でとても助かりました。

GSSMで身についたことはありますか。

修士2年目の6月に転機がありました。東京の相談センターを大阪に一本化するという方針が決まったのです。そこで、私はGSSMで身につけたスキルをすべてまとめて、「私の領域マップ」というものを作成して、現在の部署に自ら売り込み、社内転職を果たしました。GSSMで勉強していること、そこで身につけたスキルが私の社内転職を後押ししてくれたのです。現在はコンサルタントとして、さまざまな課題に取り組んでいますが、GSSMで学んだことにより、多様な課題に対してもどんなフレームで考えたら良いのかが、わかるようになっています。また、研究以外でも貴重な体験ができました。指導教員の一人である金顕哲先生から、「修士論文の成果を学会誌に投稿したらどうか」とアドバイスをいただきました。それで金顕哲先生と論文を共同執筆し、投稿。組織科学 第35巻 第4号(白桃書房)に論文が掲載されました。また、私の修了後に赴任された大澤幸生先生のチャンス発見というテーマに興味を持ち、先生と親しく交流させていただきました。大澤先生の考え方や「キーグラフ」というツールを社内に紹介・導入もしました。GSSMは学位を取得したら終わりという場所ではありません。身につけたスキルや構築したネットワークは、とても貴重な財産となっています。

(高山さんは、このインタビューの後、博士課程に合格し、4月からGSSMに復帰することになりました。)

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